今さら聞けないコーヒーのはなし
焙煎について(後編)

焙煎とは?

前回は焙煎の役割についてお話をしました。→「今さら聞けないコーヒーのはなしVol.4 焙煎とは?前編」 今回は、コーヒーボーイで使っている焙煎機のことや、焙煎士として大切にしていることなどをお話していきたいと思います。 【ヴィンテージの焙煎機】 コーヒーボーイではドイツのプロバット(PROBAT)社によりおよそ50年前に作られたヴィンテージの焙煎機を使用しています。 50年も前のものなので、当時の性能と同等の役割を果たしてもらえるようにモーターやバーナーは新しいものに取り替えています。 UG22というこの機種は、一度で20キロまで焙煎が可能な大きなものになります。窯が大きいと効率の良さだけではなく、焙煎が安定するという利点もあります。 焙煎機にはバーナーからの熱が直接豆に伝わる「直火式」と、バーナーで温めた空気を豆に伝える「熱風式」、さらには加熱された鉄板からの熱と後方から流れてくる熱風がコーヒー豆に伝わる「半熱風式」があり、プロバット社のUG22は「半熱風式」になります。 熱には輻射(放射)熱、伝導熱、対流熱といった3つの伝わり方があるのはご存知だと思いますが、半熱風式焙煎機はこの3種の熱伝導が全て取り込まれさらにバランスが良いことが、メンテナンスを繰り返しながらもこの機種を使い続ける一番の理由です。 実はコーヒーボーイが掲げている『山口の甘いコーヒー』の秘密の一部は焙煎機にあります。 バランスに優れた熱伝導と高い蓄熱性、大きな量をしっかりと時間をかけて焙煎をすることで、コーヒー豆の甘味が引き出されるんです。

 

【焙煎は日によって変わる?】 かつての日本では個人経営の小さな喫茶店が主流でした。スタバがあちこちにある今でも少なくはないですよね。 小さな焙煎機で丁寧に焙煎するのでその店の個性がコーヒーの味にも表れていて、同じ銘柄の豆であっても店によって違いが出るというユニークさを楽しめます。 一方欧米ではあまり微妙な味の違いへのこだわりが無かったことから、大きな焙煎機で大量に大胆にローストするタイプが多かったようです。 どちらもそれぞれの良さがありますが、コーヒー文化の違いが焙煎機や焙煎方法にも表れていて面白いなあと感じます。 大型の焙煎機を微調整して操作しているのは日本独特のものなのかもしれないですね。 さてその焙煎機、季節、いやその日の天候によってローストデザインが左右されるのはご存知ですか? 精製され乾燥した生豆であっても完全に水分が含まれていないわけではありません。 湿度の高い季節・日にはそれに沿った焙煎の方法が必要とされますし、気温の影響も加味する必要があります。 僕は定番の銘柄は焙煎する順番や重量を決め、ルーティン化するように心がけています。 同じ豆を同じ量焙煎することで小さな違いに気付くことができるからです。 その気付きを感じながら季節や天候への対応を考えて、できるだけ変わらない味を目標に焙煎するのがコーヒーボーイのスタイルです。 とはいっても、湿度が非常に上がる大雨や台風の日などは焙煎はお休みです。 いくら大きくて安定している焙煎機であっても自然には逆らえないですね。 【大切にしている3つのこと】 焙煎士として大事にしていることが3つあります。 ・整理整頓 ・繰り返し ・好奇心 整理整頓はどんな作業であってもミスを減らすために大切なことですね。 繰り返しは先に述べたルーティン化にあたります。 日々同じことを繰り返すことで小さな変化を見逃さなくなる。感じやすくなる。 こういった感受性は焙煎をする上でとても大事なことだと感じています。 最後の好奇心ですが、コーヒーボーイでは月間およそ3トンの豆を焙煎しているのですが、そのうち2割程度は初めて取り扱う豆(または久しぶりに扱う豆)です。 毎月次々と新しい豆との出会いがあるということは、常にコーヒーへのアンテナを張っておかなければならないので、好奇心が旺盛でないと情報量に負けてしまいます。

 

焙煎の仕事は裏方なので表に出ることはあまりありませんが、皆さんが手に取るコーヒー豆の裏にはたくさんのストーリー(焙煎もその一つ)があることを感じていただけたら嬉しいです。 ところで、英語のスラングで「いつもと同じで変わりないよ」という意味を持つSame shit different dayという言葉があるのですが、それをもじってSame stuff different day(いつもと同じで変わらないこと)とプリントしたオリジナルのシャツを作って日々焙煎をしています。 焙煎工場でそのTシャツを見かけたら、ぜひお声掛けください□

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