コーヒーボーイファミリー
ガラス作家・櫻井彩さん

いつもの時間にいつものコーヒー

山口のガラス作家・櫻井彩さんとCOFFEEBOYの出逢いは2008年、旧日下醫院跡の「ナギサ珈琲店」(現在は閉店)です。 同じフロアのギャラリーで展示会を開かれていた櫻井さん。その時からコーヒー豆を通して楽しいお付き合いが続いています。 櫻井さんの素敵なガラス作品に寄り添うコーヒーはどのような存在なのだろう? 今回は、櫻井さんの創作の毎日と、そのなかでのコーヒーの楽しみ方を伺いました。 京都の学生時代にガラス工芸と出会い、富山や長野で創作活動ののち、故郷に帰ってこられた櫻井さん。山口に戻りたかったのはなぜでしょうか? 「たとえば長野の空は、突き抜けるような濃い碧で山は高くそびえ立ち、まるで異国のような美しさ。でも私の中にある自然は、山口の、ぬるっと柔らかい『やおい』世界です。そんな私の個性である『自分の中にある当たり前の風景や空気感』を大切にしたい、と思うようになったんです」

 

そもそも、なぜガラス制作に夢中になられたのでしょう? 「吹きガラス制作は、スポーツのような体力と集中力、なかなか思い通りに作れないもどかしい感じでいっぱいの世界です。それが楽しい。計画し事前準備を万端にして本番に挑みますが、それでも気温や自分の集中度などで結果は全く違い、毎回が初演です。ガラスを操っているようで、実はガラスに操られている。このエネルギッシュさやスリリングさが楽しくて、今もずっと追い続けているんです」 優しい山に抱かれたガラス工房での櫻井さんの毎日は、きちんとタイムテーブルを決められているそうです。 「朝5時には炉に火を入れ7時半から吹き始めます。午前中は主に小さいものや塊もの、午後は器や特に薄いものを吹きます。17時に火を止め少し休憩をといった流れです。吹き作業をしない日も9時から17時まで準備等をしています」

 

そんな中、コーヒーはいつどのように楽しまれているのでしょう? 「昔は休憩ごとに手当たり次第すぐコーヒーを飲んでいました。でも、今は『コーヒーを飲む時間をしっかり楽しむようにしよう』と意識するようになりました。お湯を沸かして豆を挽いて、ゆっくり膨らませて淹れるところから楽しんでいます」 それはなぜですか? 「そのほうが、頭を完全に休められて、コーヒーがずっとおいしいんです。そして、さあ仕事、という時にスイッチがきちっと入ります。 この工房が完成したとき、大好きだった祖母が愛用していた戸棚や椅子を持ってきました。この椅子がまた座ると何もできなくなるくらい居心地がよくて(笑)。ここでコーヒーを味わいながら、窓から庭の野菜や植物の成長を見たり、広い空を眺めたり、少しお昼寝したり…仕事から完全に離れてこの時間をじっくり味わうことが大好きになりました」 お伴のコーヒーは「ライトブレンド」ですね。長くご指名いただいています。 「私はガラスにいつもペースを乱されているので、それ以外は自分のペースを乱さない『整っている』ものを欲するんです。だからコーヒーも『いつもの時間にいつもの味』がいい。 以前はリッチ&スイートを選んでいました。ところがある時『何か味が違う…』と、違う味を欲するようになって。COFFEEBOYさんに『もう少し軽い感じのはありますか?』とふんわりと相談したら、すっと出してくださったのがライトでした。これがまさに欲していた味で。それ以来COFFEEBOYさんには『絶対的安心感』を持っています」

 

「ライトブレンドも、実はいつも一定の味になるようにブレンドを微調整して提供されていると伺いました。『いつもこの味が欲しい』というこちらの気持ちに、きちんと調整して応えてくださる。そういうところも、好き(笑) 豆だけではなく、みなさんのいつもの笑顔や、スタッフの方の働き方や個人を尊重する社風も素敵だなと思います。だからコーヒーにまつわる全てに関して、全部お任せします、このまま突っ走ってください、と思っています(笑)」 窓辺で揺れる泡のような球体がくっつき合うガラスのオブジェは、たくさんの方に愛されている櫻井さんの代表作のひとつ。 「この作品は『追憶』という名前で、元は茶室のオブジェとして創作したものでした。過去と現在と未来が終わりなく巡るイメージで、時を眺めながら自分を見つめられるような作品にと考えました。 煎りたてのコーヒー豆は挽くときにカリカリと乾いた音がしますが、1ヶ月くらいすると少し湿気をすってしっとりした音になりますよね。それで『そろそろCOFFEEBOYさんに行く頃だな』と気づきます。これも私にとって『時を感じ眺める』瞬間です」

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