今さら聞けないコーヒーのはなし
ブレンドのおはなし

そもそもブレンドって?

コーヒー専門店やカフェに行くとたくさんのコーヒー豆が並んでいてどれを選べばいいのかと悩んだ経験はありませんか? それに加えて「ブレンド」か「ストレート」か、といった関門が待ち構えているし、 あまりコーヒーに詳しくない方は尻込みしてしまうなどということを耳にします。 コーヒーはカジュアルに楽しむ飲み物なのに、敷居が高いと感じてしまうのは残念だと常々感じていました。

ブレンドって?

そもそもブレンドとは、数種類のコーヒー豆をバランスよく配合したものをいいます。 その逆にストレートは1種類の豆のことを指しています。 コーヒーを知る人の中にはブレンドよりもストレートの方が上質で高価だと理解している人もいるようですが、決してそんなことはないんです。 かつて喫茶店や珈琲館が盛んだった時代の日本では、産地別のコーヒー、 つまりストレートを楽しむ習慣が根付いていて、その名残なのかもしれませんね。 対して欧米ではコーヒーといえばブレンドという認識が定着していました。 こういった背景から推測すると、日本のブレンドはストレート豆をしっかりと理解した上で作られたことが伺えます。 ではそのブレンド、いったい何種類くらいの豆を混ぜていると思いますか? 一昔前は6、7種類の豆をブレンドしていたこともありますが、 最近の傾向としては多くても4〜5種類、平均すると3種類ほどの豆を配合しています。 コーヒーボーイでは少ないもので2種類というブレンドもあります。 コーヒーボーイが毎年4月のマンスリービーンズとして提供している「ナギサブレンド」は、 創業当時の復刻ということで、7種類もの豆をブレンドしています。 味わいの奥行きを楽しめる反面、コーヒーブレンダーの立場からはバランスを取る難しさがあるブレンドと言えます。 近年 掛け合わせる豆の数が減ってきた要因として、一つ一つの豆の質が向上してきたことが挙げられます。 つまりは味の凸凹が少なくなったためにいくつもの豆を掛け合わせる必要がなくなったということです。 ブレンドの大きな特徴は、なんといっても安定した味を供給できる点。 安定というのは1年を通じて同じ配合ということではなく、気候などの外的変化があっても(配合や焙煎具合を調整することで)飲み心地が変わらないという意味です。 ここ最近では、国際的なコーヒーの大会でブレンドを使ったバリスタが上位に食い込むなど、 ブレンドへの意識がずいぶん変わってきているという印象を持っています。

味の傾向はどうやって決めている?

ブレンドには基本となる方程式のようなものがあります。 例えば酸味を重視するならコロンビア30%、ブラジル30%、モカ20%、グアテマラ20%の配合で作るといったレシピがあります。 これをベースに差し引きをしていき、オリジナルのブレンドを完成させていきます。 コーヒーボーイの一番人気「リッチ&スイート」を例にとると、 コクを重視したレシピを基本にして、コーヒーの甘さが引き立つ配合をしていくといった具合でしょうか。 ホールセール用のオリジナルブレンドを作る場合には、まずはお客さまのイメージを言語化してもらいます。 「華やか」や「爽やか」あるいは「元気が出そうな」とか「大人っぽくしっとりと」などといったオーダーもあります。 それらのリクエストから主役になるテイストの方向性を決め、イメージに合う味を完成させていく作業をします。 配合の注意点としては、目的とする味を作り出すには主従をきちんとおさえること。 これを見誤ると求めている味から遠のいてしまいます。 経験が浅いとついつい足し算し過ぎてしまうのですが、ブレンドの配合には引き算が大切で、 僕自身もいかにシンプルな組み合わせでまとめるかを大切にしています。 さらにブレンドで重要なポイントとして焙煎があります。焙煎のおはなしは別の回で詳しくお伝えしたいと思いますが、 コーヒー豆は生豆の状態をロースト(焙煎)することでお馴染みの茶色いビーンズになります。 この焙煎の具合によって引き出される風味が変わります(よく耳にする浅煎りや深煎りがこの作業にあたります)。 ストレート豆の場合は、豆の産地や特性に合った焙煎をして商品にしていくのですが、 ブレンドでは配合する他の豆とのバランスを考えながら焙煎をする場合があります。 微妙なバランスの見極め方がブレンドの性格付けを左右することもあるんです。

焙煎人が考えるブレンドの面白さ

ブレンドの面白さは、それぞれのコーヒーショップのブレンダー(ブレンド担当者)が、 さまざまなコンセプトを持って作り出していることではないでしょうか。 組み合わせによって無限に生まれるブレンド。コーヒーを愛するものとしては、その奥の深さに魅力を感じずにはいられません。 趣味と実益を兼ねて日本全国(コロナ前には海外にも)のコーヒーショップを巡りますが、 行く先々で飲むブレンドコーヒーの幅の広さと可能性には驚くばかり。 スイーツや料理に合わせた配合や、地域性を意識したブレンド、ショップのテーマに合わせた商品など、思い思いのブレンドに出会えます。 最近印象に残った一杯は、東京世田谷区のカフェで飲んだブレンドです。 看板メニューの炭焼きトーストに合わせた少しスモーキーな味わい。 トーストとブレンドの焦げ感を味わえるマリアージュだなんてオシャレだと思いませんか? 新しいコーヒーに出会えるブレンド、その面白さが少しでも伝わったでしょうか。 この夏には季節限定のブレンド・サファリがおすすめです。

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